Home » コラム:感覚刺激で心と脳を鍛える » 感覚刺激で自己治癒力を強化する(2)

感覚刺激で自己治癒力を強化する(2)

医師による自然医療の実践

私は二〇〇三年から、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックで、日本の大学としては初の《統合医療》を実践しています。

臓器の治療を重視する西洋医学に対し、《自然医療》は自己治癒力を高めることを目的に、患者さん個人の満足度を重視した全人的な医療を行うもの。また《統合医療》をひと言で表現するなら「人を幸せにする医療」だと私は考えます。

同じ病やまいでも、年齢、性別、性格、生活環境、そして残りの人生をどう歩み、どんな最期を迎えたいかという人生観によって、受けたい医療は異なるはずです。
それらを考慮しながら、西洋医学に限定せず、その方が幸せを感じる医療を提供する、それが統合医療なのです。

 

二十世紀に花開いた西洋医学は急性疾患や感染症などの原因究明とともに、その治療を可能にしました。

その反面、生活習慣病などの慢性疾患、原因不明や精神的要素が関与する疾患、再発性の疾患、末期ガンなど、治療に苦慮する例も多々あります。

西洋医学は狩猟民族の医療ですから、ターゲットを見つけて倒すのは得意な半面、敵が見つからないと本領を発揮できないのでしょう。

感染症など病原微生物という敵がハッキリしていたり、ガンなど体内にある病巣を外科手術で取り除いたりするものは得意ですが、コレステロールや血圧、血糖など、もとは人間に必要なもので、完全に倒すわけにはいかない病気は苦手なんですね。

また、精密検査で病気を引き起こす直接原因はわかっても、なぜそうなったのかがわからなければ、根本的な完治はありません。

さらに、西洋医学は要素還元主義(※2)になりがちで、心と身体を切り離して治療するケースがほとんどです。
しかし、心が動けば自律神経のバランスが変わり、内分泌(ホルモン)系・代謝にも影響を与えるというように、両者は深く関わっています。
病気を完全に治そうと考えるなら、心と身体を統合して考え、両者にアプローチする治療が必要です。

また、免疫や代謝、自律神経、内分泌系のどれか一つでもバランスが崩れれば自己治癒力のパフォーマンスは低下します。

西洋医学の薬には、それを補えるものがあります。
ただし、ずっと使い続けると、本来持っている身体の機能が完全に休んでしまいます。

一時的に薬の力を借りながら、必要なら自然医療で自己治癒力を回復させ、最終的には薬と病気からの離脱を目指す。
西洋と東洋、どちらの医学も否定せず、それぞれの長所を組み合わせて提案するのが、統合医療のアプローチです。※3

※2ある複雑な事象を理解しようとするとき、いくつかの単純な要素に分割しそれぞれを理解することで元の事象を理解しようとする考え方

※3 同クリニックでは、臨床経験豊富な医師が自然医療を自由診療(医療保険外)で提供。保険診療は行っていないので、西洋医学が必要な場合は、東京女子医科大学病院など適切な医療機関を紹介している

((3)へ続く)