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感覚刺激で自己治癒力を強化する(1)

高度な機械化・情報化の進展と引き換えに、
ここ半世紀ほどで私たちを取り巻く環境は大きく変化した。

人間の根幹となる感性(感覚)の刺激を通じて、
ヒトが本来持つホメオスタシスは取り戻せるのか。

国内初にして唯一の大学病院附属の自然医療実践機関、
東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長 川嶋朗医師に話を聞いた。

 

健康の鍵はホメオスタシスにあり

col2_img1かつてヒポクラテスは「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」と言いました。
二千年以上前ですらそうだったのですから、
高度になりすぎた現代文明は、なおさら人から自己治癒力を奪っています。

そもそも健康とは《ホメオスタシス》が維持されている状態です。
ホメオスタシスとは、血圧の調整、体液の浸透圧やPHの調整、傷の修復、ウィルスなど病原微生物の排除など、
体内の異常や環境の変化を元に戻そうと反応を起こし、状態を一定に保とうとする性質(恒常性)のこと。

人間の体温が、通常36~ 37度前後なのも、
活性酸素を分解する体内の酵素が働くために適した温度を、保っているから。
そのため暑い時には汗をかいて熱を逃がし、
寒い時にはブルッと震えて発熱し、体温を調節しています。

このように、さまざまな生体反応や免疫反応を起こしながら身体を一定の状態に保つシステムを《ホメオダイナミクス》と呼びます。
そして、これを阻害する要因こそ、病気の原因です。
〈冷え〉もその要因の一つ。

体内の温度が一度下がれば、代謝機能は12~ 20%、
免疫機能は20~30%低下し、活性が50%下がる酵素もあります。

NO合成酵素が働かなくなれば血圧の調整も難しくなり、血液の温度が下がって血はドロドロに。
脳内のトリプトファンからセロトニンを作る速度が落ちれば、
神経伝達物質制御不良で、精神的な疾患が発症するケースも考えられます。

遺伝子の修復スピードも低下するので、一細胞あたりの残留遺伝子異常は増加し、
それがガン遺伝子のタンパク質なら、やがてガンになる可能性があります。

人間は本来、自分で自分を治す力《自己治癒力(自然治癒力)》を持っているのです。
ところが最近、自己治癒力がうまく機能しない人が増えてきました。

例えば夏でも身体が冷えて仕方がない人は、
冷暖房の普及で気温の変化に対応する必要がなくなった結果、
体温調節機能が退化したと考えられます。

また、通常はストレスを受けると、副腎皮質からステロイドホルモンを分泌します。
しかしその態勢が整わずにホルモン分泌が不足すると、
ぜんそくやアレルギー疾患にかかりやすくなります。

ですから、普段から適度な負荷がかかる環境に身を置くことは、
自己治癒力を維持するために不可欠なのです

外界からの影響の中で、特に大きな影響を与える環境要因が、
紫外線、ダイオキシンなどの化学物質、そしてウィルスです。
これらは私たちの遺伝子を毎日傷つけ、遺伝子異常を引き起こします。

しかし、細胞内で遺伝子の修復機能が働くため、ほとんどの遺伝子異常は瞬く間に修復されます。
つまり細胞は常に生まれ変わり、分泌物も変化しているので、
十分前と今この瞬間のあなたの身体は、確実に変化しているのです。

(2へ続く)